2019.07.18 13:03藤村と私と夏島崎藤村が好きだ。そう言って、ああ、と曖昧な顔をして頷かれる。いや、それはいい。「まだあげそめし~」なら知っているよと恥ずかしそうに言われるのもいい。要は、私はただただ島崎藤村の作品が好きなのである。出会いは中学生の頃だったと思う。『夜明け前』その分厚い三巻の、埃臭い図書室で鎮座する威厳たるや!当時、日本近代文学に目覚めていた私は迷わずそれを抜き取った。読み始めると、目を引くのは文章の巧緻。展開の...